2011年12月4日の朝。

 

テーブルの上になみなみと満たされたウィスキーグラスが、
昨夜のままに放置されている。
ミスター大失敗の朝は実に爽やかでない。
砂を噛むように味気のない朝メシ。
そんな日の朝は何故かいつも晴れているのだった。

一人で勝負をかける時はいつでもイチかバチかの博打だ。
一つ裏返ると全てが裏目に出る。
昨夜はやる事なす事、全て裏だった。
週末の六本木の人波が歪む。
その中をまるで荻窪駅前を歩くようなフラフラとした足取りで縫うように歩く。
ああ、長い。なんで大江戸線の階段はこんなに長いのか。
まるで地獄の底に降りて行くような心持ちで地中深く潜って行く。

大失敗すると相当にハズい。
顔面が熱くなって顔でホルモン焼きが出来るくらいハズい。
だから人々は慎重に行動する。
ハズくない道を選んで歩くのは当然の事だ。
しかし、俺は「ミスター大失敗」なのだ。
何やってもハズい。立ってるだけでハズい。
だから恥は俺の基本的な属性だ。
そんなものをいちいちビビってたら何も始まらない。
全身で恥を受け止めて、
満身の力を込めて、
恥ずかしいような「何か」を叩き出したい。
失敗の芸は対価に値しないものだが、
失敗する人間の方が失敗しない人間よりオモロイ。
というのが俺の主観的な見解だ。
身の丈を飛び越えようとすれば誰だって大失敗する。
でも、その馬鹿げた試みには真実があるよ。
だから嘲笑は勲章だ。ブーイングは喝采だ。
人の子こぞりて足踏み鳴らせ!

恥を正当化しようとしている訳ではない。
どの角度から見ても恥は恥だ。
その等倍の恥を薄めずにストレートで飲み干してこそ、
ミスター大失敗の称号を得られるというものだ。
逃げるな。隠れるな。真っ正面から恥をかけ。
泣くな!ゲハゲハと笑え!

実を言えば俺はまだまだ「ミスター」の域まで達していない。
まだまだ芯が弱い。
もっとブッ太く失敗しなくてはならない。
俺の失敗はヒョロヒョロしてる。細い。
だから破壊力に乏しい。
これでは一軍には上がれん。
王選手は一本足打法を習得するために、
真剣の日本刀で素振りをしたそうだ。
俺も今日からギターで素振り一日五万回!

爽やかでない朝メシ。
それは生きてる実感の味わいだ。
反省はあるが、後悔はない。