2017年3月6日

またノロノロと話し始める。

月曜日の朝っぱらから、誰かに甘えたくて仕方がない。
いい歳をしてみっともないのは重々承知なのだが、
そんな気持ちなのだから仕方がない。

窓の外には分厚く降り積もった雪が見える。
サッシのレールにはカメムシの死骸がゴロゴロ。
山形の肘折という温泉街にいる。
二泊した。
昨日は街に一軒の蕎麦屋での昼メシから飲み始めて、
夜更けまで時間をかけて、じっくりと酩酊したのだ。
途中、学校の体育館のような所で、
ギターを叩き鳴らしたり、怒鳴り散らしたりした。
聴衆は物静かな影達だった。
裸電球ひとつの暗いステージだったので、
そんな風に感じたのかもしれない。
自分の力不足、値打ちのなさを思い知るような心持ちになりもしたが、
これが自分の道なのだ。
未だ死なずに生きているのだから仕方がない。
生きる分だけは、素直に精一杯生き切るしかない。

親の仇のように、
何度も何度も湯に浸かる。
ここの温泉はアヅイ。アヅアヅにアヅイ。
銭湯育ちの俺は、どちらかというと熱い湯が好きで、
かなりのアツアツにもそれなりの心得があるのだが、
それにしたって、アヅイ。
熱湯コマーシャルか、というくらいアヅイ。
誰もいない浴場で、
押すなよ!押すなよ!と、つぶやいて、
誰も押してくれないので、歯を食いしばって湯に浸かる。
慣れる。慣れるはず。ほらほら、段々と慣れてくる。

慣れん!無理!

ユデダコになって、フラフラになって、
部屋に帰るとカメムシ大発生。
悲鳴をあげてフロントに電話すると、
ガムテープで取ってくれ、という。
小机の上の謎のガムテープはそういう事だったのだな。
念のためカメムシコロパーという薬剤も借り受けて、
次々と湧いてでるカメムシと闘って夜が更けゆく。
湯も湧く。虫も湧く。
それは一昨日の夜の話。

朝の光が雪に照り返して眩しい。
故郷の北海道とは雪の感じが違う。
春の残雪だからそう感じるのかもしれない。

こんな歳になっても、
まるで16歳の時と変わらないような心許なさ。
これが自分の道なのだ。
あきらめて進むしかない。
強引な鼻歌とスマイル。
あきらめながらも、しぶとく進む。

明日のありやなしや、しるものか。